成田空港の安全かつ快適な運用を支える、成田国際空港株式会社のグループ企業「エアポートメンテナンスサービス株式会社(AMCO)」は、創立40周年を迎えた今年、ユニフォームを刷新しました。
機能性とデザイン性を両立させた全7アイテムの開発には、現場から寄せられた声と、これからの企業像への想いが込められています。その背景について、プロジェクトをけん引した熊谷有希也さんにお話を伺いました。
成田空港のインフラを守り抜く、AMCOの役割
エアポートメンテナンスサービス株式会社(AMCO)は、成田空港の建築施設や滑走路などの土木施設において、設計・施工から点検・保守までを担い、空港の安全と快適性を支えています。

「建築事業では、ショップやオフィスの内装工事から、旅客ターミナルの設備点検・保守まで幅広く担当しています。不具合を見つけた際は、応急処置が可能なものにはその場で対応するなど、お客様が安心して施設を利用できるよう細部まで気を配っています。
土木事業では、滑走路や誘導路など空港の基幹となる土木施設を対象に日々点検や改修工事を行っています。数百トンもの航空機が離着陸する滑走路は、わずかな異常でも安全に影響を及ぼすため、損傷が見つかれば運航に支障の出ない夜間に補修作業を実施します。」
多様な環境下で働くAMCOの社員にとって、ユニフォームは動きやすさや安全性に直結する”仕事道具”のひとつ。しかし近年、その装いには課題がありました。
ユニフォーム刷新へ。パートナー選びの決め手は、ワクワク感
長年着用してきたユニフォームには、機能面・見た目の両面でいくつかの課題が浮かび上がっていました。
さらに、社外の方と接する機会が増えるなかで「企業としてどう見せるべきか」というブランディングの視点も重要になってきたといいます。

「これまでは既製品の黄緑色のブルゾンとベージュのパンツを長く使用していましたが、廃番となったことで新しい社員には類似の現行品を支給する状況が続いていました。
しかし、色味が微妙に異なっていたり、後から追加されたアイテムが部署ごとに増えたりしたことで、全体の統一感が徐々に薄れていたのです。
また、黄緑色は視認性という点では優れているものの、正直なところスタイリッシュさには欠けると感じていました。特にお客様の前に出る機会が多い建築部門からは、“企業としての見え方を整えるべきではないか”という声もありました。
こうした状況を受けて社内アンケートを実施したところ、安全性を確保したうえで、より動きやすく、快適で、長く使用できるユニフォームを求める意見が多く寄せられ、刷新を決めました。」
ユニフォームを刷新するにあたり、コンペティションを実施。
その中から、ID UNITED ARROWSを選んだ理由を尋ねると、印象的な言葉が返ってきました。

「まず、『え、私たちの作業着をあのUNITED ARROWSがデザインしてくれるの?!』という驚きと嬉しさがありました(笑)。
プレゼン段階で、担当の伊藤旭さんがとても丁寧に製本されたデザインブックを持ってきてくださったんです。他社さんにはなかった対応だったので、その時点で『ここまでやってくれるんだ』と驚きました。
サンプルが上がってきたときも、オリジナルのハンガーを一緒に送ってくださって。見せ方にまでこだわる姿勢に、私たちのユニフォームづくりに本気で向き合ってくださっているんだなと感じました。
でも、1番の理由は、デザイン提案を見た瞬間にすごく “ワクワクした”からです。当初想定していた作業着の延長線上ではなく、まるでファッション誌を見ているようでした。
『これを自分たちのユニフォームとして形にしたい』と強く思いました。私たちにとっても初めての挑戦でしたが、メンバーの気持ちはみんな同じだったと思います。」
様々なニーズを、ひとつのラインナップに。ユニフォーム制作への挑戦
とはいえ、ユニフォームをつくることは決して容易ではありませんでした。
AMCOには建築と土木という全く性質の異なる事業があり、働くフィールドも求められる要件も大きく異なります。各部署から集まった要望は多岐にわたり、それらをひとつのラインナップにまとめあげることが大きな課題でした。
「土木事業では安全性と耐久性が最優先です。一方で建築事業はお客様の目に触れる機会が多く、デザインも重視したい。さらに、性別を問わず着やすいものをという声もありました。だからこそ、まとめるのが非常に難しく、『これも取り入れたい』『ここは改善したい』と、何度も伊藤さんに相談させていただきました」
機能もデザインも妥協しない。企業の「顔」となる新ユニフォームが誕生
そうして、各部署の要望を丁寧にすり合わせながら進んだユニフォームづくり。完成した新ユニフォームには、導入後、多くの前向きな声が寄せられています。
「やはり一番反響があったのはデザインへの評価です。とにかく”かっこよくなった”という声が多くて、ミリタリー×ワークウエアというデザインコンセプトを見事に形にしていただいたと思います。
特にブルゾンは、カーキグレーのワントーンがすごくスタイリッシュだと評判です。胸のフラップポケットは航空機の尾翼をモチーフにしたデザインで、スタイリッシュでありながらも、成田空港内で土木建設業を担うAMCOのイメージと上手く調和しています。」

また、デザインだけでなく細かな仕様の改善も満足度につながっています。
「今回のリニューアルでは、これまでのユニフォームに感じていたストレスがいくつも解消されました。
高ストレッチ素材の採用や肘タックにより関節の曲げ伸ばしがしやすくなったほか、前立てのボタンが隠れるデザインにしたことで、ボタンが引っかかりやすいという課題も改善されています。袖口も、従来のマジックテープでは”髪を結ぶときに引っかかる”という声があったため、スナップボタンに変更しました。
女性社員からは特に多くの反響がありました。パンツをベージュからブラックに変えたことで透けや汚れを気にせず着られるようになったこと、シャツは肩や腕回りにゆとりを持たせたシルエットにしたことで下着のラインが出にくく汗染みも目立たなくなったことなど、好評の声をいただいています。
フルオーダーなので、ポケットやペン刺しの位置や大きさまで細かく調整いただき、デザインと機能性の両方を実現できたと思います。」
サステナビリティへの取り組み

デザインや機能面に加え、今回のリニューアルでは環境への配慮にも取り組みました。
「計画当初から、使用済み作業服の焼却・廃棄処分時のCO2排出について考えていました。そこで今回から、使用済みユニフォームを焼却せず、フェルト化して自動車の防音材などに再生する仕組みを取り入れています。
ブルゾンやパンツにはリサイクル繊維100%の副資材を使い、ポロシャツは再生ペットボトル由来の生地を採用しました。シャツに関してはリサイクル運用を前提に、あえてリサイクル素材よりも快適性と耐久性を優先しています。」
熊谷さんは、こうしたリニューアルが社員の気持ちにも変化をもたらしたと話します。
「若い社員を中心にポジティブに受け止めてもらえている実感があります。ユニフォームが変わったことで、会社全体の雰囲気も少し明るくなったように思いますね。」
ハブ空港を目指す成田とともに、次のステージへ。
現在、親会社である成田国際空港株式会社(NAA)は、アジアの主要空港と肩を並べる「国際ハブ空港」を目指し、滑走路新設を含む大規模な機能強化を進めています。AMCOの建築・土木部門も、その基盤づくりを担う重要な存在です。

「今、空港では新しい滑走路の整備計画が進んでいます。私たち土木部門も、その準備に関わる仕事が増えてきました。空港の発展に直接寄与できるという意味で大きなやりがいがありますし、会社としても新しい仲間を迎え入れて体制を強化していく必要があると感じています」
現場の拡大に伴い、AMCOにはさらなる技術力の継承や人材確保が求められています。今回のユニフォーム刷新も、そうした未来を見据えた取り組みのひとつです。
「建設業界は人材確保が難しい時代に入っていますが、だからこそ会社のブランディングや働く環境を整えることが大切だと思うんです。ユニフォームの刷新も、企業価値を高め、より多くの人に”ここで働きたい”と思ってもらうための一歩でした。空港の発展に貢献するという使命は変わりませんが、それぞれの部門が専門性を生かしながら、会社全体として成長していきたいと考えています」
AMCOにとって40周年は、新しいスタートライン。
成田空港「第二の開港」未来の成田空港を支えるための挑戦は、すでに始まっています。
制作担当者
佐藤 美月



