1日の歩数は、およそ3万歩。
BUNKITSU TOKYOで働く書店員にとって、それは決して大げさな数字ではありません。
2025年、NEWoMan高輪に誕生したBUNKITSU TOKYOは、全国で展開する入場料制の書店「文喫」の新業態です。店舗面積1,000坪超・約10万冊の品揃えを誇る、文喫史上最大規模の店舗として、より多くの人に本との出会いを届けています。
そんな現場に寄り添うユニフォームは、この場所のために新たにつくられたもの。店長の長尾凪紗さんに制作の経緯を伺いました。
誰もが本と出会える場所──BUNKITSU TOKYO
NEWoMan高輪 Southの5階に位置するBUNKITSU TOKYO。店名をあえてローマ字表記にしたのには、理由がありました。

「今までの文喫は『文化を喫する』という意味を込めて、本当に本が好きな人に向けて、読書に没頭できる場所をつくってきました。
一方で今回は、国際的な玄関口として発展していく高輪ゲートウェイに出店するにあたり、より多くの人に開かれた文喫をつくりたいと考えました。
大人も子供も、日本の方だけでなく海外の方にも楽しんでもらえること。そして、普段あまり書店に足を運ばない人にも、本と出会うきっかけを届けられる場所でありたい。そんな思いから、これまでよりも親しみやすい文喫を目指しています。」
掲げたコンセプトは、「心が踊る、自由で、楽しい本屋」。
絵本と専門書を同じジャンルで並べたり、壁や床に遊び心を取り入れたりと、既存の書店の枠にとらわれない工夫が施されています。

「最近あまり本を読んでいないな、という方でも、ラウンジでお茶を飲みながら過ごすうちに、ふと近くの本が気になって手に取ってみる。そんな出会いが生まれたら嬉しいですね。」
1日3万歩──書店員の重労働に寄り添うユニフォームを
これまで文喫では、ガウンのようなロング丈のユニフォームを採用してきました。
落ち着いた空間にはよくなじむ一方で、現場では動きにくさを感じる場面もあったといいます。
BUNKITSU TOKYOは、従来の店舗よりも格段に広い空間を持つ書店であるため、店内を移動する距離も長く、スタッフが身体を動かす量はこれまで以上。そのため、より自由度が高く、動きやすいユニフォームが必要でした。

「書店って、皆さんが思うよりずっと重労働なんです。重たい本を運んだり、高い棚に手を伸ばしたりすることも多いですし、このお店は本当に広い。1日で3万歩歩く日もあるほどなので、動きにくいとそれだけで疲れてしまいます。」
一方で、BUNKITSU TOKYOのあり方を考えると、機能性だけに振り切るわけにもいかなかったといいます。 NEWoMan高輪という環境にふさわしいデザイン性もまた、ユニフォームづくりにおいて欠かせない要素でした。
「本屋さんのユニフォームというと、エプロンを思い浮かべる方も多いと思いますし、実際にその案も出ました。ただ今回は、NEWoMan高輪に出店するにあたって、もう少しスタイリッシュで、空間に溶け込むものにしたいと考えたんです。
動きやすくて、かっこいい。その両方を叶えられるものは何だろうと考えたときに、ベストがいいんじゃないか、という結論にいたりました。」
そうして、ユニフォームづくりのパートナーを探す中で出会ったのが、UNIX TOKYOでした。
「ホームページで事例を見て、作られているユニフォームがすごく素敵だなと思って問い合わせをしました。担当の佐々木さんには、体にフィットするベストではなく、動きやすさを重視した、ゆったりとしたシルエットにしたいとお伝えしました。」
こうして、現場の声をかたちにするユニフォームづくりが始まりました。
こだわり抜いたディテール──機能とデザインの両立
完成したベストは、もともとワークジャケットとして使われていた型をベースに、BUNKITSU TOKYOの現場に合わせて作り直したものです。
袖と襟を取り、胸元の深さを調整し、動きやすさを考えてスリットを深めに入れるなど、細かな調整を重ねています。
「本を取ったり、棚を整えたりと、しゃがむ動作が多いんです。また、常にインカムを付けているので、コードが通しやすくて、動いたときにシルエットが崩れにくいことも大事なポイントでした。そのあたりを相談して、サイドのスリットを少し深めに入れてもらっています。ポケットも、スマホやインカムがきちんと収まるように、深さをしっかり取ってもらいました。」

生地選びも、現場で感じていた小さなストレスを解消することにこだわりました。
「これまでのユニフォームはシワになりやすく、アイロンがけが大変だったので、今回はとにかくシワになりにくいことを一番に考えて、生地を選んでいただきました。ポリエステルが入っているから扱いやすいけれど、光沢が出すぎない、綿ライクな素材にしています。」
色は空間とのバランスを意識しました。
「以前は紺色だったんですが、この明るい店内だと、少し重たく見えてしまうなと思って。今回は明るめのグレーにしました。白いステッチが入っているのも、いいアクセントになっていて、全体をスタイリッシュに見せてくれていると思います。」

ゆったりとしたシルエットを選んだ今回のベスト。完成するまで、その仕上がりを想像するのは簡単ではなかったと、長尾さんは振り返ります。
「正直、この”ゆったりしたベスト”がどんな形になるのか、すごくドキドキしていました。ぴたっとしたベストならイメージできるんですけど、これはどう仕上がるんだろうって。でも実際に着てもらったら、男性にも女性にも、背が高い人にも低い人にも、みんなすごく似合っていて。思い描いていた通りのものになりました。」
自分らしさを纏って働く──スタッフからの反響
BUNKITSU TOKYOでは、ベストの下に着る服を細かく指定していません。動きやすさを前提に、シャツやタートルネックなど、それぞれが自分のスタイルで働けるようにしています。
「自分の服の上にベストを着るだけで制服になるのがいいと、みんな言ってくれています。自然とその人らしさが出るのも、このユニフォームのいいところだと思っています」
また、手入れのしやすさも格段に向上しました。
「持って帰って洗濯して、軽くアイロンをかけるくらいで済むのがありがたいです。ジャケットだと、襟をきちんと整えたり、シワを気にする箇所が多かったりしますが、このベストはパーツがシンプルなので、お手入れも簡単です。」
既存の型をベースにしながらも、現場の動きや使い方に合わせて細かな調整を重ね、ほぼオーダーメイドに近いかたちで仕上げていきました。そうして完成したベストは、BUNKITSU TOKYOの働き方を支える存在となっています。
最後に、長尾さんにこれからのBUNKITSU TOKYOについて伺いました。
「とにかく、『自由で楽しい本屋』という空気を、いろんなところから感じてもらえたらと思っています。さまざまな本や棚を用意しているので、それぞれが自分なりのお気に入りポイントを見つけて、“お気に入りの本屋さん”にしてもらえたら嬉しいです。
本が少しでも皆さんの生活に関わっていくことが、私たちの使命だと思っています。これまで出会ったことのなかった本を新しく見つけたり、逆に、自分の好きな本を誰かに教えたくなったり。そんなことが自然に生まれる場所にしていきたいですね。」
制作担当者
佐々木美季



